公的責任で養育される子ども達
平成17年に過去最低を記録した合計特殊出生率(女性が生涯に産む子どもの数)は、依然として低い水準となっています。15歳未満の子どもの人口 約1千570万人(平成29年4月1日現在)は前年度を下回り、昭和57年から36年連続で減少。また、総人口に占める子どもの割合も、43年連続で低下しています。国立社会保障・人口問題研究所によると、現在の傾向が続けば、2060年の人口は約8千674万人となり、出生率は50万人を割り、高齢化率は約40%に達するという厳しい見通しが示されています。
一方で、若い子育て世代が新しい世代を安心して産み育てていけるよう、行政としても「雇用の確保」「妊娠・出産支援」「子育て支援の充実」「働き方の見直し」等、さまざまな対策を行っています。
「雇用の確保」では、若年層非正規労働者の正社員化を図るとともに、地方の雇用対策として魅力ある仕事づくりや助成金の活用が図られています。
「妊娠・出産支援」では、妊娠期から子育て期に至るまで切れ目ない支援体制の確保や不妊治療に関する相談・費用助成、母子保健施策としての健康診査や保健指導・経済的負担の軽減等が挙げられます。
「子育て支援の充実」では、保育所等での受入児童数の拡大を図る待機児童解消に向けた取り組みや、その確実な実施に向けた保育士確保対策の推進が進められています。
「働き方の見直し」では、特に仕事と家庭の両立ができる職場環境の整備が重要であり、育児休業法の整備・拡充だけでなく、子育てサポートに積極的な企業として認められた企業が使用できる認定マークの作成や税制上の優遇措置等、制度面からの支援も図られています。
このような社会環境の中、公的責任で養育されている子ども達がいます。本来、子どもの養育はそれぞれの家庭において親により養育・保護されることが基本となりますが、少子化及び核家族化だけでなく、社会関係の希薄化や女性の社会進出などを背景として、子どもを取り巻く家庭や地域社会の様相は大きく変化しています。そのため、これまで家庭や地域社会が果たしてきた子育ての機能が弱まってきており、結果として保護者とともに暮らせない状況が生み出されています。これらの状況は、特殊な環境の子どもや家庭に起こる特別なものでしょうか?「父の仕事が忙しく、母親が頼りにする身内がそばにおらず、社会から孤立していくことで精神的に追い込まれていってしまう…」ということは、どこの家庭でも起こり得る可能性があります。そして、その問題の多くは家庭内だけで解決できるものではなく、何らかの形で社会的な支援が必要です。社会状況に応じて問題の中身も変化するため、その支援方法も変わっていきます。戦後すぐの時期は戦争孤児や浮浪児の保護が中心でしたが、高度経済成長を遂げる中で都市化・過疎化が進み、養育に関する問題も変化していきました。最近では、子どもが虐げられるケースも増加しており、社会的に注目を浴びています。つまり、養育に関する問題は、その時代におかれている子どもや家庭状況を把握した上で、解決方法を考えていくことが大切と言えます。そしてその解決策の一つが、保護者のもとを離れて、公的責任で社会的に子ども達を養育・保護するとともに、養育に大きな困難を抱える家庭を支援していくことと言えるのです。
(M・H)
▪ 養護問題発生理由 ▪
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
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昭和58年 | 父母の 行方不明 9,100人 (28.4%) |
父母の離婚 6,720人 (21.0%) |
父母の入院 4,090人 (12.8%) |
父母の死亡 3,070人 (9.6%) |
虐待 (放任・怠惰、 棄児、養育拒否) 2,890人 (9%) |
平成25年 | 虐待 (放任・怠惰、 棄児、養育拒否) 11,377人 (37.9%) |
父母の 精神疾患等 3,697人 (12.3%) |
破産等 経済的理由 1,762人 (5.9%) |
父母の就労 1,730人 (5.8%) |
父母の拘禁 1,456人 (4.9%) |
出典:「厚生労働白書」・「よくわかる社会的養護」(ミネルヴァ書房)