ニコニコ子育て〜保育の現場から〜②

掲載日:2017年7月1日(土)

【新生児(0歳児)の子育て】

人間の赤ちゃんは、他のどんな動物よりも弱く生まれ、誰かに育ててもらわないと成長できない弱い命です。そんな赤ちゃんが生まれつきもっている力は、泣くこと、笑うこと。嫌なことや不快感があるときには泣く、うれしいときや心地好いときには笑うことで自分の思いを伝えています

赤ちゃんは五感の視覚以外は、お母さんのお腹にいるときにすでに発達していて、その五感を使って人と関わり合い、成長していきます。泣いていたら、赤ちゃんに声をかけ、不快だと感じていることを探って、優しく接することを繰り返すことで人を信じる力、自分を信じる力の根源となり、基本的な信頼心が築かれていきます。このことはこの時期に一番大切な育ちだと思います。

ではどうしたら、信頼心が育つのでしょうか。むずかしく考える必要はありません。“赤ちゃんがうれしいこと、喜ぶこと”をしてあげることです。ただ、世話をするということではなく、周りにいる大人が「喜んで」してあげることで、赤ちゃんはその思いを受けとめるのです。深い愛情に包まれていると感じると、赤ちゃんは安心して成長していきます。

次に、体の発達特性を見ていくと、生まれたばかりの赤ちゃんは、一時的に体重が減ることがありますが、それは体内の水分量の調整によるものですから心配ありません。その後、体重は増加していきます。

ねんね、お座り、ハイハイからあんよへ、一日いちにち赤ちゃんは成長していきます。最近の赤ちゃんは、ハイハイはあまりせずに伝い歩きが始まることも多いようですが、赤ちゃんや住環境によってそれぞれのようです。今までは、ねんねだった赤ちゃんも手と足を使って動き出すと、探究心と行動力が生まれます。目に入るものすべてに興味津々で全力で突進します。そして、欲しいものを手に取ることができると、とても大きな喜びと達成感を得ます。

この時期は行動範囲も一気に拡大し、なんでも口に入れる時期ですので、誤飲の事故も増えてきます。5カ月頃を過ぎると直径4㎝くらいのフィルムケースよりも小さいものは飲み込む危険があるので、手の届かない場所にしまうようにしてください。一時も目を放すことができません。この頃の赤ちゃんは、ティッシュペーパーのいたずらも大好きです。

引っ張ればどんどん出てくるティッシュペーパーの箱は赤ちゃんにとって、不思議な箱に違いありません。また、指先を使い、つまむということもうれしい成長です。引っ張り出したティッシュペーパーはお母さんが「ありがとう」と受けとり、再利用すればよいでしょう。不思議と何箱かを使いきった頃を境に、次に興味を移していきます。怒らないで見守ってあげてください。

さて、育児書にはよく“○○カ月頃には○○ができるようになる”と書かれていますが、その通りに育っていかないと感じる方が多いように思います。本に書いてあることはあくまでも平均値です。毎日しっかりミルクを飲んで、よく眠り、ニコニコと機嫌良くすごしているのであれば心配はいりません。昼夜の授乳や夜泣きにお母さんもゆっくり眠れず、心も体も疲れていることでしょう。そんなときは自分を責めてしまうこともあるかと思いますが、この時期のお母さんたちは皆同じような気持ちを抱えているようです。自分だけが母親失格だと思わないで、誰かに相談して心をリセットすることも大切だと思います。

そしてお父さんにお願いしたいことがあります。どうぞお母さんに任せきりにしないでください。そして、できることなら「いつもありがとう」と声をかけてください。それだけで随分とお母さんの気持ちも楽になり、ニコニコと笑顔で毎日を過ごしていくことができるでしょう。

(T・T)