ニコニコ子育て〜保育の現場から〜①

掲載日:2017年6月1日(木)

「ニコニコ子育て~保育の現場から~」

保育園は、0歳児から就学前の6歳児までのお子さんを、仕事や介護、病気等の理由から子育てがむずかしくなっている保護者に代わり、一時的にお子さんをお預かりする社会福祉施設の一つです。

保育園を利用される保護者の方々や地域の方々から、日々さまざまな育児の悩みや相談が寄せられます。ゆっくりとお話を伺い、ひと通り話し終えると「これまで話す相手がいなくて、誰にも相談できなかった」と涙を流される方や、一転して晴れやかな表情に変わり「安心しました」と笑顔になる方が多くおられます。共通して言えるのは、子どもを大切に思うからこそ悩みが尽きないということです。

子育てに不安や悩みはつきものです。子どもの成長とともに悩みの種も変わります。なかなか解消できずに、不安や焦りを感じても、相談する相手がいないと、自分だけで抱え込むことになります。その結果、育児に自信を無くし、鬱になってしまうというケースが最近は多く見られます。

その原因の一つが“インターネットによる情報過多”にあると言われています。インターネットで検索するとたくさんの情報があふれています。その中で本当に必要な情報を得られず、翻弄されてしまうことがあるようです。また、少子高齢化・核家族化などの社会背景も子育てを困難にしているようです。現代の保護者の世代は、兄弟の少ない家庭で育ち、大人になるまで子どもとの関わりの経験が乏しいため、子どもとの関わり方がわからなくなってきているようですが、育児に不安を持つ皆さんに発達の見通しや、子育てに大切なことを伝えることで、楽しく子育てをしていただけるのではないかと考えています。

 乳幼児期の育ちに大切なことを少し述べさせていただきます。

“乳幼児期は子どもたちが成長し、自分で人生を切り拓いていくために必要な「生きる力」を育てる大切な時期だ”と言われます。保育園ではよく乳幼児期の育ちについて、“高層ビル”にたとえて話します。一見すればモダンで洒落た作りの高層ビルでも、土台となる基礎工事が手抜き工事であれば、予期せぬ災害が起きた時に簡単に崩壊してしまいます。しかし “基礎に問題があるから”と、一度出来上がったビルを取り壊して作り直すのは、簡単ではありません。乳幼児期は“土台となる基礎作りの時期”ですが、最近はそのような目に見えにくい成長の基礎作りを丁寧に重ねていくことよりも、乳幼児期からの早期教育が重要視され、先に頭を育てようとし、心を育てることが後回しになってきているように感じます。

昔は親戚や地域の中で子どもがたくさんいて、子どもたちの社会がありました。その中で人間関係を結び、ケガをしながらも、危険回避力を身につけました。また、遊びを通して、心も体もたくましく成長しました。時代が変わり、子どもたちは成長を急がされているように思います。本当に大切なことは、早期からの教育ではなく、家庭の中で、お母さんやお父さんとのふれあいの中で、“自分は愛され、守られている”という自己肯定感を育てることであると思います。

子育ての時間はあっという間に過ぎていきます。まずは、子どもが子どもでいられるかけがえない時間を、親子で存分に楽しみましょう。ニコニコ子育て、笑顔で楽しい子育てを。

(T・T)