第9回:少子・高齢社会の中の日本の福祉

掲載日:2017年3月17日(金)

認知症を診断する一つの基準として、現在はIQ(知能指数)テストが主流ですが、最近ではEQ(情動指数)テストが注目されています。

IQは記憶力や判断力を表し、EQは感情や本能を表します。例えば「食欲の秋なので、旬の松茸や秋刀魚を食べたい」と思ったとします。この時「いつ、どこで、誰と食べに行くのか、予算はどれくらいか」等、いろいろな計画を立てる部分がIQの範囲で、「旬の松茸や秋刀魚を食べたい」と思った部分がEQの範囲です。

認知症になると一般的に、記憶力や判断力が低下し、日常生活に支障をきたす状態が出現しますが、喜怒哀楽等の感情や本能保たれていることがわかってきました。また、認知症高齢者が日常生活の中で感激(または感動)すると脳が活性化し、徘徊や暴言、妄想や不安等が軽減されるという研究結果もあるようです。

ある新聞の記事に「一人暮らしの場合、認知症の進行は遅くなる傾向がある。それは、生活の中で抑制する人が周囲にいないため、自分のやりたいようにできるから」とありました。認知症の場合、状態によっては危険なことが多いため、一人暮らしはお勧めできませんが、この説明には納得できるものがあります。

認知症高齢者を介護する人は、言動のみに目を奪われず、相手が「うれしい・楽しい・しあわせ」と感じることのできるような工夫を取り入れるようにしましょう。
例えば、

  • 相手の話を笑顔で頷きながら聞き、馴染み感を与える。
  • 食事はゆっくりとらせて満足感を与える。
  • 排泄は早めに声をかけてトイレに誘導する。
  • ご機嫌をうかがいながら入浴に誘い、さっぱりさせる。
  • 身だしなみに気を配ることで、生活に張りを生む。
  • できることを見つけて生き甲斐を作らせる。
  • 日中を楽しく過ごし、夜は安眠させる。
  • 妄想は否定せず、話を合わせて安心感を与える。
  • 徘徊も叱らず、原因を考えて予防策を立てる。
  • 自尊心を傷つけないようにすること。

いずれにせよ、否定せず、叱らず、傷つけず、安心感や満足感を与えることが効果的で大切なポイントです。

参考 公共財団法人認知症予防財団

(K・T)