前号までアルツハイマー型認知症(全体の約5割程度)の主たる症状である「記憶障害」に着目した内容を紹介してきましたが、それ以外の代表的な認知症の特徴について今回はふれておきたいと思います。
血管性認知症(全体の約2割程度)は、脳内の血管が詰まって発症する「脳梗塞」や、脳の血管が破れて出血する「脳出血」・「くも膜下出血」により、血流が行き届かなくなった部分の脳細胞がダメージを受けて認知症が発症します。脳の神経細胞がダメージを受け、日常生活においても理解できること理解できないことが出てきます。昔は「まだらぼけ」とも言われていました。初期の頃は意欲低下や感情の起伏が激しいのが特徴です。
レビー小体型認知症(全体の約1割程度)は、脳の中に「レビー小体」と呼ばれる特殊なタンパク質が大脳全体に広がった結果、脳の神経伝達等が障害を受け認知症が発症すると考えられています。ちなみに「レビー小体」が運動機能を司る脳幹部にだけ溜まった場合は、パーキンソン病を発症します。よってパーキンソン病と共通する
①固縮(筋肉がこわばる)
②無動(動作が遅い、歩行しにくい)
③振戦(手足がふるえる)
の症状が出現する場合があります。
また、レム睡眠行動障害(寝ている間に大声を出したり暴れたりする)が出現する場合もあります。レビー小体型認知症の特徴としては、初期の頃から幻視(実在しないものが見える)が出現します。例えば、いるはずのない子どもや虫・蛇が「部屋にいる」と言ったりします。
前頭側頭型認知症(全体の約1割程度)は、何らかの原因により、大脳の「前頭葉」と「側頭葉」が強く萎縮することにより発症します。このタイプの認知症で原因が判明しているものとしては「ピック型認知症(ピック病)」で、ピック球という異常構造物が神経細胞に蓄積することが原因で引き起こされます。「前頭葉」は物を考えたりする中枢的な役割をもった司令塔で、理性的な行動ができるようにしたり計画立案を担う部分です。「側頭葉」は、言語などを司っている部分となります。こうした大切な大脳の機能を担う部分が障害を受けるため、万引きや痴漢などの「反社会的行動」を罪悪感なく行ってしまいます。また、決まった時間に同じ行動を繰返す「常同行為」が見られるのも特徴的です。
このように認知症の原因疾患により、その特徴も様々であり、認知症高齢者のタイプに応じた対応や工夫が求められています。
(参考文献)『認知症の人がスッと落ち着く言葉かけ』 株式会社講談社