こんにちは。愛知県名古屋市、日蓮宗法音寺の鈴木廣修と申します。今回お届けするのは、お数珠の解説です。身近な道具だけれど、意外に知らないその意味、歴史や使い方などの解説です。
数珠って何?
数珠は仏具です。つまり仏教の道具なのです。そして、道具としての役割は主に二つあります。まず、唱えたお経やお題目の数を数えるための道具。次に、雑念を抑えて仏様を念じるための道具です。
ひとつめの、数を数える道具というのはなんとなく理解して頂けるかと思います。実際に、珠を一つずつ摘んでいくと数を記録できます。しかし、ふたつめの仏様を念じるための道具というのは理解が易しくないかもしれません。どうしてそんな役割を持っているのでしょうか。それを理解するには数珠の歴史を知る必要があります。
数珠の歴史
実は元々、数珠は仏教の道具ではありませんでした。仏教が生まれたのは西の国インドですが、そのインドには仏教が生まれる以前にある宗教が盛んに信仰されていました。それが『バラモン教』です。数珠は元々、似たようなものが、この『バラモン教』で使われていたのです。それが後に、仏教にも取り入れられました。
はじめの頃、数珠は仏具というよりも、人の数を数えたりするそろばんのような道具でした。それが徐々に、唱えた呪文を数えるためにも使われるようになります。つまり、宗教的に使われるようになるのです。
そのようにして、お参りの際に数珠が使われるようになると、段々お参りの時には欠かせない物と認識されるようになります。いわば仏様と向き合うときに、威儀を正すために身に付けるものとされるようになっていったのです。このようにして数珠は、数を数えるための道具でありながら、雑念を抑えて仏様を念じるための道具となっていったのです。
しかしまだ、念じるための道具というと、馴染みのない物のように思われるかもしれません。例えば、映画等でこのようなシーンを見られたことがあるでしょうか。キリスト教の方々がロザリオを身につけて、お祈りをされるシーンです。ロザリオは一般的にもお祈りの道具としての認識が広まっているように思われますが、数珠もそのロザリオと似たようなものと思っていただければ、理解が易しいかもしれません。余談になりますが、実を言うとそのロザリオも、数珠と同じようにバラモン教の数珠から進化したものだと言われております。
珠に込められた意味
さて、ロザリオがお祈りの道具として知られているのは、十字架が付いているからだと思います。宗教的な意味が分かりやすく見てとれます。一方で、数珠はどうでしょうか。実は、数珠にも仏具としての特別な意味が込められているのです。
はじめに、中央の玉がいくつあるかご存知でしょうか。これは108個あります。除夜の鐘を突く回数と同じですね。108は、煩悩の数です。
煩悩というのは、あれも欲しいこれも欲しいという我儘な心や、小さなことで腹を立ててしまうような、トゲトゲした心のことです。いわば心の毒のようなものです。仏教は、この煩悩を抑えることによって、私たちは幸せな人生を歩めるのだということを教えています。いわば、仏教の修行の目的がこの数珠には刻まれているのです。
さらにここからは、私たち日蓮宗の数珠に特有のお話になります。
二つの房の根元に付いている二つの大きな珠は、月と太陽の神様を表しています。月と太陽がなければ、私たちはもちろん植物や動物たちは生きてすらいけません。月と太陽は、私たちの命を育む、神様のような存在です。先程の煩悩を抑えるには、自分たちが何のおかげで生きていけるのか、その恩を知ることが肝心だと言われます。
次に4つの小さな玉は、四天王という神様です。四天王は、東西南北の方角に住んで、世の中で仏教が生かされているか、見守っていらっしゃいます。
仏教の教えは、世の中のあらゆる営みに通じる教えです。仕事や人付き合いなど、日常のどんな場面でも、教えを実践することによって心の安定を得られます。実際に、世の中の偉大な経営者の中には、仏教の教えを実践して大きな成功を収められた方もいらっしゃるのです。
さて、他の珠にも色々な意味がこめられていますが、今回は以上になります。
日蓮宗の数珠の付け方
数珠は二重にして、左手の親指と人差し指の間に掛けます。
しかし、数珠を買いに仏具屋さんにいくと、二重にできない短めの数珠が売られているかもしれません。これはどの宗派でも使える兼用のものです。同様に左手にかけて使います。
ですが、日蓮宗では全ての方に、長い方の正式な数珠を使って頂きたいと考えております。まだお持ちでないかたは是非おひとつご用意ください。
仏具屋さんには様々な数珠が売られております。キラキラした綺麗なものから、良い香りのする香木が使われた物まで。オシャレ感覚でも楽しんでいただけるかと思います。
数珠はいつ付けるの?
数珠は、お葬式・法事・お墓参りなど、故人のご冥福をお祈りしたり、仏様と向き合って仏様を念じるときに付けます。
しかし、例えば観光目的でお寺等に行かれる際には、持っていなくても良いかと思います。お世話になっているお寺さんに行かれる際には持っていかれると良いでしょう。
最後に
法音寺では、仏教の教えをわかりやすく解説した書籍・教育マンガを数多く出版しております。施本と申しまして、無料でお配りしているものもございますし、web上でお読みいただけるものもございます。詳しくはホームページの書籍・経本・教育マンガのページをご覧ください。